数ある宝石のなかでも知名度・人気ともに高く、
昔から多くの人々を魅了してきたのがダイヤモンドです。
そのダイヤモンドには「天然ダイヤモンド」と「合成(人工)ダイヤモンド」の2種類があります。
天然ダイヤモンドは地球内部で長い時を経て生成される一方で、科学の力を用いた人間によって生成されたダイヤモンドを「合成ダイヤモンド」といいます。
今回は、多様な使い道があり、宝石としても価値が高まりつつある合成ダイヤモンドの特徴と魅力を紹介します。
合成(人工)ダイヤモンドとは
前述したように、合成ダイヤモンドは人の手によってつくられたダイヤモンドです。
とは言え、天然ダイヤモンドと比較してもその構成はほぼ変わりありません。
つまり、合成ダイヤモンドと天然ダイヤモンドの主となる違いは「人の手によるものか、自然に生成されものか」という点のみだといっても良いでしょう。
日本では「合成石」「人造石」「模造石」の石の分類のうち合成石に該当することから「合成ダイヤモンド」と呼ばれています。
天然・合成ダイヤモンドと模造ダイヤモンドの見分け方
ダイヤモンドには天然、合成のほかに「模造ダイヤモンド」もあります。
模造ダイヤモンドは、天然・合成のように炭素だけはなく、酸化ジルコニウムなどの成分が含まれているため「ダイヤモンドの模造品」という立場になっています。
模造品とはいえ、天然・合成のダイヤモンドと模造ダイヤモンドを素人が見た目だけで判断するのは簡単ではありません。
ただ、以下の3つの方法によって違いが分かります。
ダイヤモンドのジュエリーを持っている人は、ぜひ一度試してみてください。
1.息を吹きかける
天然・合成ダイヤモンドは熱伝導率が高く水をはじくため、息を吹きかけても少し時間が経てばすぐに表面の曇りがとれます。
一方、模造ダイヤモンドは上記の特性が弱いため、天然・合成ダイヤモンドと比べると曇った時間が長くなります。
2.屈折率を確認する
天然・合成ダイヤモンドの光の屈折率は2.24と比較的大きいため、新聞紙や本の上に置いたときに下の文字を読み取ることが難しくなります。
一方、模造のダイヤモンドは屈折率が小さいため、ダイヤモンドを通して文字を読み取れます。
3.重量の違いを確認する
すべての模造ダイヤモンドに当てはまるわけではありませんが、代表的な模造ダイヤモンド「キュービックジルコニア」などは天然・合成よりも密度が高いので、同じサイズでも重量が重くなります。
上記のような違いから、合成ダイヤモンドは模造ダイヤモンドとは一線を画す別物ということをご理解いただけたと思います。
次は天然ダイヤモンドと比べても勝るとも劣らない合成ダイヤモンドの魅力について紹介します。
合成(人工)ダイヤモンドの
用途と魅力
高温高圧法、化学気相蒸着法などによって生成された合成ダイヤモンドは、天然ダイヤモンドと比べると安価で安定して生産できます。
そのため、これまでは主に工業用の機械などに使われてきました。
これらの用途で生産された合成ダイヤモンドは「工業用ダイヤモンド」と呼ばれることもあります。
■合成ダイヤモンドが使われている製品・機械
・メス
医療現場で採用されている合成ダイヤモンドを使用したメスです。
通常のメスよりも切れ味が優れており、眼科手術を中心に使用されています。
・スクラバー
半導体製造の重要なポイントである「ウェハを切り取ってチップにする」工程で使用される産業機械です。
合成ダイヤモンドの優れた硬度と切れ味を生かすことで、精密にウェハをカットできます。
その他、切削・研磨用の道具などにも合成ダイヤモンドは幅広く使われています。
天然ダイヤモンドと同じ強度や特性を持ちながら、天然ダイヤモンドが持つ「個体によって品質が大きく異なる」というデメリットがない合成ダイヤモンドは、今後も活躍の場を広げていくと考えられています。
価値が上がりつつある
合成ダイヤモンドの宝石
工業用としては価値を認められてきた合成ダイヤモンドですが、宝石の価値を決める重要な要素である「希少性」に秀でた天然ダイヤモンドに大きく劣っていました。
しかし、2018年にダイヤモンドの販売では世界トップクラスのデビアス社が合成ダイヤモンドの原石をつかったブランド「ライトボックス・ジュエリー」を発表し、日本でも2019年に開かれた「第30回国際宝飾展」に合成ダイヤモンドのセミナーが開催されるなど、近年、急速に合成ダイヤモンドに注目が集まっています。
合成ダイヤモンドの宝石としての価値を以下でまとめたので確認してください。
合成ダイヤモンドは「リーズナブル」
前述のとおり、合成ダイヤモンドは1カラットあたり800ドル、0.5カラットが400ドルと天然ダイヤモンドと比べると50~70%ほど安く提供されています。
価値をどのように感じるのは消費者次第ですが、天然ダイヤモンドと比べると大きなカラットのジュエリーを身に付けやすくなるのは確かです。
また、安価であるからこそ、気軽に着用できるのも合成ダイヤモンドを使ったジュエリーの魅力ではないでしょうか。
希少性よりも倫理観を重要視する消費者への訴求
しばしば「宝石の王」とも呼ばれ、華やかなイメージの天然ダイヤモンドですが、原石の採取における過酷な労働や不正取引、環境破壊などが問題提起されることもあります。
工場や研究所で生成される合成ダイヤモンドは、このような問題は起きにくいと考えられており、今後は希少性よりも倫理観を意識する消費者が手にする機会が多くなるとされています。
このように業界が抱える問題解決と新たな顧客の獲得の両立を図れるとしても、合成ダイヤモンドは注目されています。
ジュエリー業界のスタンダードに
なるかもしれない
「合成ダイヤモンド」に注目しよう
何百万年、何億年かかってできる天然ダイヤモンドと比べ、数週間で完成する合成ダイヤモンドは、低価格や環境などに与えるメリットが小さいなど、大きな魅力があります。
産業用としては古くから活用されている一方、ジュエリー用としてはそれほど流通していませんでした。
しかし、2018年にアメリカ連邦取引委員会が「合成ダイヤモンドであっても、天然のダイヤモンドであっても同じ『ダイヤモンド』と宣伝しても構わない」と従来の定義を変更して認めたことから、今後は合成ダイヤモンドの普及は勢いを増すと予想されています。
この流れは日本も同じで、2019年を「合成ダイヤモンド元年」と称し、ジュエリー業界や売買の場が、合成ダイヤモンドの価値を大きく変えようという動きが「第30回国際宝飾展」では特徴的だったといいます。
天然ダイヤモンドと比べても遜色のない、合成ダイヤモンド。
一度ジュエリーショップなどを訪れて実際に手にとってみてはいかがでしょうか。