- 甲冑について
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古くは出土した埴輪や古墳の埋葬品に挂甲など大陸からの影響が強く見られる甲冑(鎧・兜・槍など)がみうけられます。平安時代からの武士の出現とともに大鎧(おおよろい)という日本独自の甲冑(鎧・兜・槍など)がみられるようになってきましたが、日本の甲冑(鎧・兜・槍など)はその後の武器や戦闘形式の変化により常に改良が加えられていたのですが明治維新により武士階級が消滅したことや軍備の近代化にともなって実用に使われることはなくなりました。
鎌倉時代ごろから端午の節句に飾る菖蒲が「尚武」に通じることから、また菖蒲の葉の形が剣を連想させること等から端午は男の子の節句とされて、五節句(1月7日の七種節供・3月3日の桃節供・5月5日の菖蒲節供・7月7日の七夕祭・9月9日の菊節供)の一つとして5月5日に鎧、兜、武者人形や金太郎・武蔵坊弁慶を模した五月人形などを飾り男の子の成長・健康を祝い、祈るようになりました。この風習は5月5日のこどもの日として祝日に認定され今でも続いています。
現代では古美術品、工芸品的、歴史資料的に意味を持ち重宝されています。日本の甲冑(鎧・兜・槍など)は、世界の防具、武具類と比べても非常に美しく、微細な装飾に富み凝った作りがされています。中世、近世において武士が権力の中核にあったことや、特に戦乱の無い江戸時代においては一部の上級武士が権力の象徴として豪華絢爛な甲冑を珍重したためであり、その時代の金工・組紐など様々な装飾技術が惜しげもなく注ぎ込まれただけでなく基礎的な鍛鉄・皮革・漆工芸分野の技術も当時最先端の技術を駆使して製作されたものが多数残されています。
だだ江戸後期頃からは単に装飾品としての兜なども多数出回っており、当時江戸や長崎に訪れる外国人向けのお土産品や庶民にもその安価な今で言うレプリカが流行ったと思われますが、当然ながらこれらには歴史的にも美術品的にも価値はあまりありません。現在も甲冑の製造は続けられていますがこれもレプリカ同様歴史的・美術品的にあまり価値はありません。
「甲冑」とひとまとめに紹介してきましたが「具足」という呼び方もあったり、甲冑は様々な部位から成り立ちます。ここでは大鎧を例えに出し、部品についてある程度解説します。大鎧は「兜」「鎧(胴)」「袖」の三つの部品で一揃えとします。大鎧が使われていた平安時代は騎馬戦が主であり、弓の使用や矢による攻撃への防御を重視した構造となっています。「篭手」「袖」「脇楯」「草摺」「脛当」「鳩尾板(きゅうびのいた)」「栴檀板(せんだんのいた)」等の部品も付属します。
剣道などで聞き覚えがある篭手ですが、実は鎌倉時代前期くらいまでは左手にしか着用していませんでした。理由としては右手につけてしまうと弓矢を射つ際に邪魔になってしまうからです。鎌倉時代後期くらいになるとなぎなたでの戦闘が主流になったため、現在の一般的なイメージである両手に装着する形となったのです。
袖とは鎧の左右に垂下し、肩から上腕部を防御するための部品です。大鎧に使われる袖は全て大袖で左の袖を「射向けの袖(いむけのそで)」と、右の袖を「馬手の袖(めてのそで)」と呼び、射向けの袖の方は敵に向けている事が多いため堅牢に作られています。
脇楯は体の右に当てて鎧の間を塞ぐ部品で、壺板と呼ばれる鉄製の板の下に革製の蝙蝠付を付け、そこから草摺を垂らした構造をしている。前後左右の4枚からなり、前後左右それぞれに名称がある。前部の「前の草摺」と後部の「引敷の草摺(ひっしきのくさずり)」は最下部が左右二つに分かれて、騎乗の際邪魔にならないように設計されています。左部を「弓手の草摺(ゆんでのくさずり)」右部のものを「脇楯の草摺」と呼ぶ。大鎧の草摺は鞍の上での安定を考え、どっしりした設計になっています。
栴檀板と鳩尾板は元々は両方とも栴檀板と呼ばれていたのですが、作りが左右で違うためか草摺のように左右で名称が別になっています。栴檀板は右の肩から胸にかけてつけ、胸板の隙間を覆う札、仕立ての板です。高紐を切られるのを防ぐための部品で、弓を引いたりする際に屈伸可能なように3段からなる革製、鉄製の小札で作られています。一方、鳩尾板の方は急所に近いため一枚の鉄板で作られている物が多いです。
大鎧の兜は星兜、筋兜が用いられます。大鎧に使われる兜は顔面の両側を防御する吹返しが大きく、頭部へ飛んでくる矢の防御に重きを置いている事がわかります。兜の下には?烏帽子(なええぼし)という柔らかい帽子を着用したりします。
「吹返し」の名前が出ましたが、兜にも多くの部品があります。「鍬形」「八幡座」「篠垂」「星」「獅噛び鍬形台」「眉庇」「据金物」「吹返し」「しろこ」「忍び尾」などがあります。鎧と違い兜の場合装飾用の部品が非常に多いです。兜につける飾りを立物といいます。鍬形の部分ですね、兜で一番目に付く部分であるとも言えます。
立物は鹿の角をデフォルメ化したものが起源と言われていますが、今では様々なデザインがあり、武将をイメージする時に兜の立物を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?当時の武将たちにとって兜は旗と同じように周囲の士気を高める大事なシンボルであったとも言えます。
これら全てがあって「大鎧」となるわけです。当世具足や腹巻、胴丸といった他の鎧にもまた違った特徴があり、ここでは言い表せない程部品の一つ一つに意味があり作った人の想いがこめられているのです。
また面白い話としてはこの日本式甲冑は琉球やアイヌ、台湾などにも輸出されていたと思われる物証も残っています、ただしそれらは本来の甲冑に比べいくらかは軽装であったと言われています。 - 有名な甲冑
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